1.これではまさに世話係
モビーディック号に客が来た
乗り込んできたのは偉そうでガサツな気に食わないジジイ1人
俺が白ひげに入る前からの親父の知り合いらしい
世界最強といわれる白ひげに物怖じしない態度が親父は気にいってるらしい
「グララララ!お前が侯爵だと?あこぎなしみったれ商人が偉くなったもんだ!」
「グハハハ、金さえ積めばなんだってなれるってもんよ!テメェこそ弱いくせにまだ海賊続けてたか!」
世界政府公認の侯爵といえど、あの白ひげに何という口を利くのだ
と二人の関係を知らない新入りが憤って、今にもジジイに飛びかからん勢いだ
まぁ、飛びかかったところで敵うはずもない
あのジジイは恐ろしく強い
この俺でも勝てた試しがない
「おいジジイ!さっさと用件言って帰りやがれよぃ!」
「あぁ?誰に口きいてんだ、坊主?脳みそまでパイナップルになっちまったか、グハハハ!」
「てめぇに言ってんだ!このクソジジイ!」
だからこいつは嫌いなんだ。
いつまでたっても見習いのガキ扱いしやがって、今の俺は一番隊の隊長だぃ
ジジイは顔見知りのクルーに一通り声をかけ、親父と向き合った。
さっきのバカそうな笑いが顔から消え、珍しく真面目な顔をした。
「エドワード、すまねぇが二人で話してぇンだ。」
「ああ」
すまねぇがこいつとサシで飲ましてくれ
親父に言われちゃ仕方ねぇよぃ
親父たちを甲板に残し、俺たちは船内へと引き下がった。
1時間ほどして甲板の様子を見に行くとジジイの姿はなかった。
乗ってきた船も見当たらない。
そのかわり、見慣れねぇ女が親父の隣に座っている。
「親父、ジジイはどうしたんだよぃ?それにその女は・・・」
「おう、マルコ。あいつなら帰りやがった。」
親父はいつもと同じように酒を樽ごとかっくらい、隣の女になにか話している。
俺が近づいていくと、その女はスクッと立ち上がって俺の顔を見上げた。
「この人があの不死鳥のマルコ?なんだ、案外普通なのね。」
「・・・なんだよぃ、てめぇは」
「あら、私のこと知らないの?信じられなーい!」
女はわざとらしく大げさに驚いた。
その態度だけでも十分頭にくるのだが
厚化粧と着けすぎた装飾品
そして身にまとっているどぎつい香水の匂いが余計に神経を逆なでする
「あいにく女の趣味は良いもんで。」
「どーいう意味よ!」
「グラララ!確かにイイ女とはいえねぇな!」
「おじさままでヒドイ!」
豪快に笑い飛ばす親父と顔を歪ませるいかにも成金な女
いったい何なのだとマルコは思わずため息がでた
「だから、おまえ一体何なんだよぃ。」
「うふふ、教えてほしいのぉ?」
どうしよっかなー、などと言いながら女はくすくすと笑う。
不死鳥のマルコとして名前が売れはじめて以来、マルコにこんな態度をとる女がいただろうか
いや、いなかった
「・・・・・・親父、こいつ殴ってもいいかよぃ?」
「きゃーなんて野蛮だこと!初対面の人に対してそういうこと言うなんて、信じらんなーい!こわいわー、おじさま!」
まるで芝居でもしているかのように
女は大げさなに白ひげの膝に泣きついた。
白ひげは普段は冷静沈着な息子が女に振り回されてる様を楽しそうに見ていたが
ようやく事情を説明した。
「まぁ落ち着けマルコ、こいつはなの孫娘だ。ちっとの間預かることになった。」
「・様よ!この絶世の美女と謳われる姿をしっかり目に焼き付けなさい、マルコ!」
「・・・お前が絶世の美女ならこの世は終わりだよぃ」
あのクソジジイの孫なら納得がいく。
どうりで気に食わないわけだ。
「マルコ、こいつが船にいる間」
「こいつの世話係なんて死んでもいやだよぃ。若けぇのにやらせてくれぃ。」
そう吐き捨てるとマルコはほかのクルーを呼びに船内へと入って行った。
「あら、意外と短気な人なのね。おもしろーい!」
「あんまり怒らせてやってくれるなよ?」
「んーおじさまの頼みなら考えといてあげる」
「グラララ、好きにすればいいさ!」
の世話係には若い船員がついた
しかし、は事あるごとにマルコを呼びつけ
身の回りの世話をさせた。
なんでオレが、とマルコが文句を言うたびには白ひげに泣きつき
親父からしてやってくれと頼まれれば断われない。
親父はなんであんなバカ女に甘いんだよぃ!
これじゃまさに世話係じゃねぇかよい!
結局マルコは事実上、の世話係となった
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