カンカン、と心地よいリズムと鼻歌に意識が浮上した。
今回の眠りはどうやら浅かったようで、まだ低かった太陽が今は頂上から少し傾いているだけだった。
窓と扉が開け放たれていて、心地いい風が羽を揺らす。
青い鳥はとんでいった 4
扉の向こうでは男が何かを作っているようだった。
上手いとは言えない唄を口ずさみながら。
「くぇえ!」
「あ、起きた!」
これといって用はなかったが、なんとなく男を呼んでみた。
すると男は慌ただしく駆け寄ってきた。
「やっぱり起きた!なんかそんな気がしてたんだよなー。昼飯残しといてやったんだぜー感謝しろよ!」
「くぇうえ(押しつけがましい奴だよぃ)」
「そっかそっか、嬉しいかー!」
男は嬉しそうにマルコの頭を撫ぜ、嬉しそうに笑った。
会話はまったくかみ合っていないが男が嬉しそうならいいだろうよぃ。
男が少し遅い昼飯をマルコに食べさせる。
もうマルコは完全とは言えないが、随分動けるようになった。
しかし鳥の姿のままというのは何かと不自由で、まだ飯は食べさせてもらっている。
それと、食べさせてもらうという行為が気にいったようだ。
食事のとき、男は時折マルコに話しかけてくるが返事のしようもないマルコは適当に相槌を打つのみだった。
「俺今さ、船作ってんだ。まだまだ出来上がりには程遠いんだけどよ。」
「くぇ」
「後は船さえ出来ればこの島から抜け出せるんだ。」
「くぅう」
「エターナルポースと海図を調査団が残してくれてたんだ。だから後は船だけなんだがな、俺不器用だからなかなかうまくいかなくて・・・」
「くええええ!?(エターナルポースだと!?)」
「うお!どうした!?」
それがあるのならサッサと言いやがれと言わんばかりの勢いでマルコは男に飛びついた。
ログさえあれば今すぐにでも飛び立っていけるのだ。
「な、なんだよ・・・そんなに動いたら傷開くぞー」
「くぇえ(一刻も早く帰るよぃ)」
「ん?なんだ?」
マルコは男のシャツの裾を引っ張ると外へと連れて行った。
治癒していない傷口が痛むが今はそんなものどうでもよかった。
とにかく一刻も早くエターナルポースを手に入れて船に帰らなければならない。
外に出たマルコは口ばしを使い、地面へ文字を書いた。
”オレが助けを呼びに行ってやる。だからエターナルポースと海図を渡せ。”
嘘は言っていない。
あの島に戻れば領主に言ってこの島のことを言ってやるくらいはしてやる。
幸い、この海域の海図もある。
ただ、まずは船に帰ることを優先させるだけだ。
「すげぇ、やっぱおまえ言葉わかってたんだ・・・それにオスだったんだな・・・」
「くぇええ(悠長なこと言ってねぇでさっさと渡せよぃ)」
「で、でもさ、その怪我で飛べんのか・・・?」
その瞬間、マルコの体は青い炎に包まれた。
再び姿を現したマルコの体には傷一つなかった。
「やっぱりおまえ、不死鳥だったのか・・・!?」
「くぅう・・・(隠すつもりはなかったんだが・・・)」
男はひどく驚いていたが、次第に笑顔になっていく。
共に過ごした中でこの男はいつも笑顔だった。
本当にうれしそうに笑うやつだ。
「そっか、じゃあ任せる。助け、呼んできてくれんだろ?」
「くえ」
「頼むな、んで元気でな。」
「くぅう・・・」
男はエターナルポースをマルコの首につるしてやり、海図を足へと括り付けた。
幸運なことにそのエターナルポースはマルコが仕事をたのまれたあの島のものだった。
マルコは最後に甘えるように男に擦り寄った。
今までの礼を言うかのように。
「よしよし、気をつけて行けよ。」
「くぇ」
マルコは大空へと飛び立った。
振り返ってみると、男はその様子をやはり笑顔で見送っていた。
「(もう二度と会うことはねぇだろうが、嫌いじゃなかったよぃ)」
マルコは二度と振り返ることなく大空へと飛び立っていった。
だから知らない。
あの男が泣きながら笑っていたことを。
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