誰もが目を疑った。
われらの不死鳥が悠々と
空から帰還した。
青い鳥はとんでいった 5
マルコが行方不明になったと連絡を受けた白ひげはすぐに昔馴染みが治める島へと向かった。
誰もが信じられなかった。
あのマルコが行方不明になるだなんて。
「ニューゲート、すまない。俺の息子がとんでもないことを・・・」
「あぁ、とんでもないことをしてくれたな。マルコはオレの息子だ。」
もし、見つからなかったときは馴染みのお前でも容赦しない。覚悟しておくことだな。
白ひげは本気だった。
あの不死鳥のマルコが戻らなければ、自分はもとよりこの島ごとどうなるか分からない。
「こんなことになるなんて、オレ・・・オレ・・・」
「黙ってろ、バカ息子。この件がどう転ぼうとお前とは縁を切る。」
「そんな!パパ、許して!」
「おい!このバカにもう一度飛んで行った方向を聞き出して捜索船を出せ!見つけねぇと俺たちの命がねぇぞ!さっさと行きやがれ!」
白ひげのクルーたちは親父の帰還を固唾をのんで迎えた。
あの白ひげが怒りをあらわにしている。
誰が話しかけられようか。
若き2番隊隊長はその沈黙を破った。
「親父!マルコは本当に・・・」
「捜索隊を出す。エース、適当に人手揃えて行ってこい。他の奴らはあの野郎の捜索船に乗り込め」
「わかった」
行方不明になって3日目だ
マルコは生きているのだろうか。
生きている、きっと。
あいつが死ぬわけがねぇ。
エースは信じている。
兄の様に慕っている、自分を2番隊の隊長にと後押ししてくれたマルコが死ぬわけがねぇ。
「死にやがったらぶっ殺す!」
4日目、5日目と時間ばかり過ぎていく。
領主の話では妙な物のせいで自我を失っているという話だ。
そろそろ限界かもしれない。
6日目
近くの島々をあたっていた船が続々とかえってきたが、良い知らせを持った船はない。
理性を失い、深手を負った状態で6日間も生きていられるのか。
もしかすると海に・・・
7日目
白ひげは宣言した。
今日みつからなければ捜索は打ち切ると。
「なんでだよ、親父!行方不明なってたった一週間じゃねぇか!」
「エース、親父の気持ちもわかってやれ」
「サッチ・・・」
「普通の行方不明ならば、望みはあるが」
「ジョズ・・・!」
「悔いていないものが、いると思うか・・・」
「だったら、探せばいいだけじゃねぇかビスタ!」
エースは今にもビスタに殴りかからんとしたがサッチによって床に抑えつけられた。
「今の状況を見ろ、エース!最強の白ひげ海賊団のクルーがほとんど出払っちまってんだ!こんな状況でどうやって親父を守るんだ・・・」
「今政府や海賊に攻撃されれば・・・わかるだろう。」
「サッチ・・・ジョス・・・」
「時間の無駄だ。後1日の猶予がある。この1日で見つければいい話だぜ、エース。」
「あぁ・・・解ったよ、サッチ・・・」
隊長たちは再びマルコ捜索へと船を走らせた。
誰もが願う、どうか生きていてくれと。
マルコがいなければ誰がこの船をまとめるのだ。
もうすぐ夜が明ける。
死に物狂いの捜索の介なく、マルコを見つけることは出来なかった。
「出港の準備しとけ、日の出とともに出るぞ。」
「親父・・・」
エースの握った拳には血がにじんでいる。
悔しくてたまらない。
領主のバカ息子を殺したってこの悔しさと怒りはおさまらない。
「エース・・・」
「しばらく、一人にしてくれ・・・」
エースは一人海へと向かう。
マルコが飛び去って行ったという方角の海へと
まだまだ教わりたいことがあったのだ。
もっと一緒にバカ騒ぎして、戦って、親父を海賊王にすると誓い合った仲間なのに
「あんただけは、最後まで一緒だと思ってた・・・バカ野郎が!」
夜が明ける。
水平線から太陽が昇ってくる。
船に戻らなければ、と腰を上げたエースの目に、今は忌々しい限りの朝日が飛び込んでくる。
「いかねぇと・・・」
エースは朝日に背を向け、歩き出した。
悔しさと怒りを、この海に捨てた。
白ひげと対峙した領主とその息子は惨めなくらい縮こまって真っ青な顔をしていた。
「グラララ、覚悟はできたか?」
いつもは陽気に響く白ひげの笑い声も今は悲しみに満ちている。
海賊として、舐めた真似をした奴には制裁をしなければならない。
この領主のせいで白ひげ海賊団の戦力に多大な影響が及んだのだから。
「あぁ、好きにしてくれ。」
領主は覚悟を決めた。
そのとき、白ひげと領主の間に何かが落ちてきた。
「エターナルポース・・・?」
そして、空を見上げた白ひげの視線の先には
悠々と舞うように飛んでいる
息子の姿だった
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