不死鳥はゆっくりと白ひげの前に降り立った
そして領主の息子に視線をやると
首のものを取らせた

人の姿へと戻ったマルコ
白ひげを見上げてにやりと笑った



「遅くなったよぃ、親父」






青い鳥はとんでいった 6


白ひげの笑い声と領主親子の倒れる音が響いた。


「親に心配かけさせんじゃねぇ、バカ息子が!」

「そりゃ悪かったよぃ。でもまぁ無事だったからいいだろぃ?」

「グララララ!許してやらぁ!」


わぁあああ、とクルーたちがマルコに押し寄せる。
先頭はエースだった。
涙と鼻水でぐちゃぐちゃの顔で飛びついてきて
心配掛けやがって、ぶっ殺してやる!
何ニヤニヤ笑ってんだよ!俺たちがどれだけ心配したと思ってやがる!

無事で良かった・・・

マルコはクルーたちに揉みくちゃにされ、最初は再会できた嬉しさに浸っていたが
だんだんと激しさが増していき、息ができずに本当に死ぬかと思った。
1000人以上の想いは一気に受け止めるには重すぎる。




それからは三日三晩の大宴会が行われた。
主役のマルコは白ひげを筆頭に離してもらえなかった。
親父はバカ息子といいながら笑っている
エースやサッチにはどれだけ心配したと思ってる!と延々絡まれた。
1番隊の隊員たちには俺たちを置いて行かないでください、と泣きつかれた。



あの男のことを、マルコはまだ言っていない。
決して忘れていたわけではない。



ただ、ふとした時に


あのへたくそな鼻歌を思い出すのだ


あの唄は何というのだろうか


気になって仕方なかった


そして、マルコは決めたのだ。




「親父、頼みがあるんだよぃ。」





















不死鳥が飛び立って3日が過ぎた。
男はベットに寝転がり、天井をただただ見つめていた。

「あいつは、戻ってこねぇさ・・・」

男はマルコを信じていなかった。
いや、マルコをではない。

男は何も信じていないのだ。




男はそこそこ名のある海賊の副船長だった。
そう、小隊長なんて真っ赤なウソだ。
船長は幼い頃から共に育ってきた親友だった。
貧しい暮らしだったがいつか共に海賊として名を上げようと誓い合った。

親友は男より弱かったが、人を引き付けるものがあった。
男も親友の魅力に惚れ、副船長として支えてきた。
親友の邪魔になるものは全力で排除した。
幼いころに誓い合った夢、親友を海賊王にするために。


しかし、親友は夢と現実を切り離して考えていた



あの嵐の日、男が見たのは高波ではなく
自分を船から突き飛ばす親友の姿だった


いつまでも海賊王なんてバカなこと言ってるお前を見るたびに虫唾が走る
俺はもう興味ないんだよ
金と宝と女がありゃ俺は満足さ
じゃあな、夢見る少年!
これで俺はお前に怯えることなく眠れるぜ!



男が信じていたものは何だったのだろうか
幼いころに誓い合った夢を
やっと現実にできると思っていたのに
信じていたのは自分だけだった




男はもう、信じることができなくなった

信じるものがなくなったのだから



あの時、海で死ねていればよかったのに

何を間違ったのか生きて島に流れ着いてしまった

生活に必要な物がそろってしまっていた

なんて運が悪いのだろう

脱出のためのエターナルポースまであるではないか

天は俺を死なせてくれないのか



流れ着いて1年近くの月日が流れた
脱出用の小舟を出来るだけ時間をかけて作っていたが
もうすぐ完成してしまう

このまま生き延びて何をしろというのだ
信じるものを失った俺に

また信じられるものを探せと?

そんな勇気、持っているわけがない
絶望感を味わうのは1度で十分だ

あとひと月もすればこの船は完成するだろう
陸の生活に戻って、嫁さんをもらって、子供を授かって
そんな平凡で幸せな生活を手に入れるのも悪くない
でも、俺はもう二度と心の底から笑うことはできないんだ。


食料を探して森を歩いていると、異質な気配を感じた。
この森のものではない。
気配を感じる方角へ足を進めると、そこには美しい鳥が横たわっていた。

美しい

文献で読んだことがある、まさに不死鳥そのものだった。

この不死鳥が飛んでいるところを見てみたい。

ただ、ただそう思った。
あぁ、この感覚はそうだ。

親友と思っていたあいつを海賊王にしたいと思った時と同じ感覚だった







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