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「おーい!海兵ー!どこ行ったんだぁー!」
春島が近いのか、うららかな日差しが降り注ぐメリー号に
この船の船長であるモンキー・D・ルフィーの声が響き渡る。
どうやら先日の一件によりこの船に身を寄せている海兵を探しているようだ。
その海兵といえば、みかん畑の日陰になっているところで読書をするロビンに
隠れるようにして昼寝をしているようだ。
「ふふふ、船長さんが呼んでるわよ?」
「・・・・・・。」
「あらいいの?クルーが船長に逆らって。」
「あのなぁ、オレがいつ海賊になったんだよ。オレは海軍なの。海兵さんなの!」
ロビンに呆れたような、不満そうな顔を向けて抗議するが
とうのロビンは楽しそうに笑っているだけだ。
「船長さんはそうは思ってないみたいよ。ほら。」
「海兵!ここにいたのかー!釣りしようぜ、釣り!」
「あのなぁ、麦わら。なんでいちいちオレを誘うんだよ。」
「ん?そりゃおまえ、あれだ。おまえなんか面白そうだからだ!いいからこいよ!」
「いてぇ!ちょ、ロビン!何とかしてくれ!」
「いってらっしゃい、海兵さん。」
海兵の身体に長い手足が巻きつき、引きずられながら甲板へと連行されていった。
その様子をロビンの瞳はやわらかく、優しいまなざしで見つめていた。
「釣りって言ってもなーんもかからねぇじゃねーか。」
「まぁそういうな。待ってりゃなんか釣れるって、ししし!」
「・・・はぁ。」
隣を見ると鼻の長い奴、たしかウソップだったか、そしてもふもふのトナカイが明らかに俺を警戒しながら同じように釣りをしている。
そんなに怯えなくてもいいのになぁ。
「ルルルルフィ、そいつは海兵なんだぜ!?縛ってなくていいのかよ!?」
「ウソップ、こいつはもう海兵じゃねぇぞ!麦わら海賊団の音楽家だ!」
「いつのまにそうなったんだよ!おまえらの船長は一体何考えてんだ!?」
「・・・俺たちにもよくわからん。」
「うん、ルフィの考えがわかる奴なんていないと思うぞ。」
(クルーにまでこんなこと言われるこいつは、ホントに船長なのだろうか・・・。)
「なぁ、おまえ歌えるか?音楽家なんだから歌えなきゃ困るぞ?」
「誰が音楽家だ!」
「歌えねぇのか?」
「人並み程度。てか、なんで音楽家なんだ?」
「海賊は歌うだろ!」
「・・・・あー、そう。」
力が抜ける。
調子の外れた麦わらの鼻歌を聞き流しながら、垂らした糸の先を見つめる。
麦わらは本当にガープさんの孫なんだな。
突拍子のない行動とか、世話焼きなところとか。
どうもオレはこの雰囲気には敵わないようだ。
「麦わら」
「ん、なんだ?」
「・・・なんで、海賊になったんだ?」
「自由だからだ。」
「自由・・・?」
「海賊は冒険するし、宴もするし、歌もうたう!海賊は自由だ!
海賊王はこの海で一番自由だから、だからオレは海賊王になる!」
こんなにも純粋な奴がいるなんて。
ああ、オレには麦わらがまぶしすぎる。
「なあ、おまえはなんで海兵になったんだ?」
「え…あ、オレは…」
オレが海兵になった理由…か。
「忘れた。」
「そっか、忘れたのか。じゃあ仕方ねぇな!」
「そいつ絶対ウソついてるぞ!ウソつきのオレにはわかる!」
「トナカイのオレにもわかったぞ!」
「ん、うそなのか?」
「さぁ、どうだろうね。」
「はぐらかしたぞ!」
「よしよし、トナカイくんはかわいいねえ。」
「ば、ばかヤロー嬉しくねえぞコノヤロー!」
「はーい、よーしよーし、いい子いい子」
「チョ、チョッパーが取り込まれたぁああ!だがしかーし、このウソップ様には8千を超える部下が…」
「ししし、やっぱりお前おもしれーなー!!」
海賊らしくない海賊、ね。
変な奴らだなーホント。
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