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麦わらの拘束から何とか逃れてキッチンに入ると金髪の男が煙草をふかしながら机で何か作業をしていた。
確か、サンジだったかな。
こいつには何発も蹴りをいれられてあまりいい印象はないなぁ。
ま、それはお互いにだろうがね。
「何だ海兵、敵のアジトの探索か?」
「…水を飲みに来ただけだ。」
「ああ、そうですか。海賊の飲む水でよければいくらでもどうぞ。」
「………」
やっぱり好きじゃねぇ。
こいつもロビンとオレが顔見知りってとこも気に入らねぇみてえだし、よっぽど嫌われてんのね。
さっさとこの空間から出て行きたくて用事を済ませるべく
コップに水を注ぎ、一気に飲み干した。
軽くすすいで元の場所にコップを戻してそっと、横目で金髪を見た。
どうやらレシピのようなものを整理しているらしい。
意外とマメなんだなぁ。
「何見てやがるクソ野郎。」
「いや別に…あ、それ」
しまったと思ったが言葉の方が先に出てしまった。
案の定金髪はオレを睨みつけてきたが、しかたがない。
「あぁ?」
「あ、いや…その料理見覚えがあるなぁと。」
「これか?ずいぶんマイナーなもん知ってんだな。これはサウスブルーにある島の郷土料理だぜ?」
と金髪は驚いた顔をした。
それがどうしたと一喝されると思っていたのだが、料理の事となるとガードが緩くなるらしい。
「ああ…オレの故郷の味だ」
「へぇ、そりゃ懐かしいだろうな。」
「………」
黙りこくったオレを見て金髪は故郷を懐かしんでいるように見えただろうか。
「つくってやろうか?」
「ん?あ、いや…そうだな、久しぶりに喰いたいな。」
「おう、じゃあ作ってやるよ。ありがたく思えクソ野郎。」
「あぁ、お前の料理はうまいからな。楽しみにしてるよ。」
そう言い残して海兵はキッチンから出て行った。
「……急に素直になってんじゃねぇよクソ野郎」
海兵の思わぬ褒め言葉に少し照れた様子のサンジはさっそく南国の郷土料理の仕込みへととりかかった。
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