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昼寝をしすぎたせいか夜中に目が覚めてしまった。
意識も冴えてしまってすぐに寝ることは無理そうだしトレーニングでもするか
とゾロは甲板へと足を進めた。




「123…124…125…」

そこには珍しく先客がいた。
海兵の野郎か。
どうも胡散臭い野郎だが、ルフィが気に入ってるのなら仕方ない。
斬ってしまうわけにもいかず、かといって仲良くやる義理もねぇ。


「135…ん、誰だ?」

気配は消していたはずなのに、だてに海軍名乗ってんじゃねえのな。
ゾロは物陰から月明かりにへと足をすすめた。

「………」

「あぁ、あんたか。じゃあオレは戻るわ。」

横を通り過ぎようとした海兵の腕をゾロは反射的に掴んだ。

「お前…何が目的だ」

「…さぁね。」

ゾロは海兵の腕を強く引っ張り床へと叩きつけた。

「いって…!」

「うちのキャプテンがお前を気に入ってるから斬らないでやってるが、少しでも不審な動きをしたら斬る。」

「………斬る、ねぇ。」

「失せろ。」

「ったく、引き止めたのはお前だろーが、あーいってぇ。」

ゾロに握られたところが月明かりだけでは分かりにくいがおそらく腫れているだろう。
そこをさすりながら海兵は立ち上がった。


「なぁ、ロロノア・ゾロ」

「あぁ?」

「オレが麦わらにちょっかい出したのはただの好奇心からだ。それに、お前らなんて簡単にやれると思ってた。」

「はっ、たいそうな自信だな。」

「予想以上にお前らって強いのな。んで、想像以上に純粋だった。」

「……。」

「今までいろんな海賊見てきたけど、お前らみたいに純粋に冒険を楽しんでるやつらなんてごく一部だ。オレはそういう奴らが好きでね。敬意を払うことにしてるんだ。」

「海兵が海賊に敬意だ?」

「オレは海賊のすべてが悪だとは思ってないんだ。」

「酔狂にも程があんだろ。」

「そこが今のオレと海軍の考え方の違いでねぇ。悩みどころなんだよな。まぁつまり、オレが言いたいのはな」


海兵の目がゾロをまっすぐに捕える



「オレはこの船を悪いようにはしねぇ」


「……その言葉、どこまで信用できるかね。」

「お好きに。ま、オレは所詮政府の人間だからな。」


おやすみ、と海兵は船内へと消えていった。



「あの女といい、あいつといい…油断できねぇなぁ。」






ゾロは月明かりの下、モヤモヤとした気持ちのまま身体を動かし続けた。



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