Empty 8


昼食を終えたメリー号ではそれぞれが思い思いに過ごしていた。
腐った卵にタバスコに、様々な食材と材料を港で買い込んだウソップはご機嫌だった。
ウソップ工場でいそいそと新兵器を開発しようと気合十分に張り切っていたのだ。

「〜♪〜〜♪」

「ご機嫌だな、長っ鼻くん。」

「どぅわぉぉぉおお!!!ななななな!!」

「あはは、ナイスリアクション!」

「かかか海兵!」

「そんな警戒すんなよ〜。オレ、お前とゆっくり喋りたいなぁと思ってたんだ。」

「か、海兵がオレに何の用だよ!」

「用事がなきゃ話しかけちゃダメなのか?」

「べ、別にそういうわけじゃ…」


この海兵がメリー号に来てから月が一回りした。
ルフィは事あるごとにこいつにちょっかいを出してるし
チョッパーは妙に懐いてやがるし
サンジはちょっと優しくなった、気がする。


徐々にこの船に馴染んでいってるくせにこいつは素性をまったく表わさないし、現に名前すらわからない。
オレ様の勘ではこいつはあんまり良くない奴だと思うんだが、みんながこいつを受け入れ始めていることに
「知らない人と喋ってはいけない病」が発病してしまった。
ウソップ海賊団は壊滅の危機に瀕している!


「くっ、あははは!」

「な、なんだよ!?」

「ウソップってさ、思ってること顔にちょー出るね!」

「な、おおおおれの考えを読むとは!やっぱりお前はこの船を乗っ取ろうとしてるなぁ!!」

「してないしてない。むしろ出ていきたいから、あーおもしれぇ。」


やっぱり気に食わない。
それにこいつはみんなには素っ気ない態度のくせにオレにはやたら話しかけてくる。
これってこの船で一番弱いオレから狙っていこうって魂胆な気がしてならない!


「今日は何作るんだ?」

「て、敵に教えられるかよ!」

「えーひどいなぁ。ま、そのとおりだけどさ。」

「おおおお前、なんでオレにばっかやたら話しかけてくるんだよ?」


ぎゃー!オレなんでそんな核心聞いちゃってんの!?
気が動転しすぎだろ!

「だってウソップの話、おもしれぇんだもん。」

「は?」

「俺さ、母親死んでから食事を誰かと食べるのが苦手というか、好きじゃなかったんだ。何しゃべっていいかわかんないし。」

海兵がオレの横に座り直す。
オレはこいつが自分の事をしゃべってることにびっくりして、怖がるのを忘れてしまった。

「でもさ、ここの食事ってすっげぇおもしろいな。特にウソップの話すげぇ好きなんだ!ウソってわかっててもわくわくする。」

「あ、いや…オ、オレ様の話だからな!面白いのはあたりまえだ!」

「ふふふそうだな、キャプテンウソップ〜」

「お、おう。」




こいつのことを他のクルーより多く知っている。
その優越感がなんだか嬉しかった。
こいつが海兵なのは変わりないけれど、少しだけなら話をしてやってもいいかと思う。



←back top next→